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ろじ[路知]連載:赤米今昔物語 〜赤米に魅せられて〜 第二回

安本 義正

赤米の復活

赤米の受難
 赤米を炊くと、小豆で色づけした赤飯のような色のご飯になります。そのことから、日本では赤米は赤飯のルーツだといわれ、静かなブームが起きています。その赤米も今から20数年前まで、一般の人の目にふれることがありませんでした。しかし、それより以前に赤米が日本に存在していなかったという訳ではありません。赤米は明治の始め頃まで、日本国内において一般的に栽培されていたのです。しかし白米より食味が劣るということ、そして収穫量も少ないということから、白米に混ざることが問題視され、白米との共存が許されなくなりました。その結果、政府の強い指導によって赤米は追放され、急速に栽培されなくなったのです。
 赤米はとことん嫌われてしまいました。それでも忍耐強く田んぼに顔を出して必死に生きようとしていましたが、非情にも雑草として抜きとられ、ついに日本国内では一般の人の目にふれることがなくなってしまいました。そして一部の研究者のための研究対象でしかなくなってしまったのです。
 その赤米が追放されて100年以上も経ってから、あることがきっかけで一般の人に赤米の存在が知られ、再び日本国内によみがえることになりました。それはまるで、私たちの農業のあり方や、米問題、環境問題に何らかの警鐘を鳴らしているかのように復活してきたのです。



赤米のご飯

赤米木簡の発見
 全国的に様々な遺跡の発掘調査が行われています。藤ノ木古墳や吉野ヶ里遺跡などの発掘に代表されるように、新しい事実が明らかにされるたび、一般考古学ファンは古代のロマンをかき立てられ、自らも古代史の謎を解き明かそうという熱意がみなぎり、考古学ブームは一向に止むことがありません。古い都として歴史に残る藤原京跡をはじめ、平城京跡、恭仁京跡、難波京跡、長岡京跡、平安京跡等も盛んに発掘調査が行われてきました。
 奈良の平城京跡では、昭和29年(1954)に国による本格的な発掘調査が始まりました。その後、奈良国立文化財研究所による継続的な発掘調査が昭和34年(1959)から開始されました。平城宮跡を始め、長屋王家跡、二条大路跡その他、平城京全体にわたって広範囲な発掘調査が関係者の手で行われてきました。発掘現場からは、種々の出土品に混じって数多くの木簡が出土しています。平城京跡全体で10数万点を超える木簡が出土しています。
 「米」に関する木簡も数多く出土していますが、その中に「赤米」と書かれた木簡が見つかりました。昭和40年(1965)に平城宮跡から出土した木簡の中に、「丹後国竹野郡芋野郷 うねめ部古与曽赤舂米五斗(うねめべこよそあかつきごめごとう)」と記された赤米木簡が含まれていたのです。この木簡は平城宮跡の東北部にある造酒司の井戸の排水溝から見つかりました。長さが33.6センチメートル、幅が1.7センチメートル、厚さが0.4センチメートルの大きさです。木簡に記された竹野郡芋野郷は現在の京丹後市弥栄町で、この木簡は弥栄町からうねめ部古与曽という人が平城京へ赤舂米五斗を納めたことを示す荷札です。赤舂米は精米した赤米を意味します。この荷札木簡の発見が、赤米復活の直接のきっかけとなりました。




赤米木簡

赤米復活
 赤米木簡の写真が、昭和50年(1975)に、京都府立丹後資料館で展示され、資料館を訪れた弥栄町在住の郷土史家芦田行雄氏の目に留まりました。氏は大変興味を示され、赤米探しが始まったのでした。
 数年後の昭和56年に、岡山県総社市の国司神社に赤米が受け継がれていることがわかり、芦田氏は知人の紹介で神社から少量の種籾を譲り受けました。自宅前庭先の約2メートル四方のミニ水田で赤米栽培の挑戦が開始され、9月の末に通常の米より1ヶ月半遅れて赤い穂が出たとのことです。十数本の苗からの収穫量はたったの一合(180ml)足らずでした。食べたいのを我慢され、翌年の種籾に取っておき、その種籾で本格的な赤米栽培が始まったのでした。これが赤米復活の第一歩でした。芦田氏の赤米づくりがマスコミに報道されてからは、年々赤米の存在が一般の人びとに知られるようになり、全国的に赤米栽培の輪が広がっていったのでした。



総社市の国司神社の赤米の穂

《次回は12月初旬掲載》

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