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梵鐘の世界では、日本三名鐘という言葉がよく聞かれる。「姿(形)の平等院」「声(音)の園城寺(三井寺)」「銘の神護寺」であるが、現在この中で、常に鐘の音を聞くことができるのは園城寺(三井寺)のみである。 今回は、三名鐘の一つである「平等院鐘」についてふれてみたい。 姿(形)の平等院 平等院というと、10円硬貨の図柄でおなじみの鳳凰堂を思い浮かべやすい。そして本尊の阿弥陀如来像や金銅鳳凰像、そして雲中供養菩薩像というような順番ではないだろうか。私も梵鐘に興味をもつ前は、鳳凰堂そのものと、雲中供養菩薩像にばかり目をとられていたように思える。平等院博物館(平等院ミュージアム鳳翔館)では、雲中供養菩薩像を間近に見られるということもあって、せっかくの梵鐘の展示を、足早に通り過ぎてしまっていた。雲中供養菩薩像の姿は雲間に漂い、それぞれの手には楽器が握られ、心に響く穏やかな楽の音を奏でているように見える。その姿に魅かれていた。 梵鐘に興味をもつようになってから、改めて平等院を訪れた時、梵鐘はぽっかりとライトに照らし出され、金属とは思えないような暖かみのある色合いの肌を見せていた。その照らし出された梵鐘の肌には雲間に漂う天人の姿があった。 ![]()
写真提供:平等院
和鐘は朝鮮鐘に比べ、鐘の表面に装飾が少ないとされているが、平等院鐘には美しい装飾がなされている。天人・獅子・唐草模様など、全面に繊細な装飾が施され、姿形が美しいことから「姿(形)の平等院」と呼ばれている。無名のため、製作年は確定されていないが、およそ12世紀ごろの作品とされている。 平等院鐘の各部分音の周波数 ここで大熊氏の調査研究データから、どのような音が鳴っていたのかをご紹介する。実際の研究は、基音(f1)に対する周波数比(f2以降)で表されているが、それを具体的な周波数に置き換えたものが以下の表である。 ![]() 今回は、実際の響きを聴くことはできなかったが、姿(形)の素晴らしさは十分に見ることができた。梵鐘(複製品)の響きは「除夜の鐘」と「法要」の際に聴くことができるという。 ![]() 平等院ミュージアム鳳翔館出口にある平等院鐘(複製品) 独立宗派 朝日山平等院(どくりつしゅうは あさひざんびょうどういん) 世界遺産にも登録されている平等院は、その独特な形をした鳳凰堂でも有名である。平等院の前身としては、源融が宇治に別業を営んだことから始まり、その後、陽成天皇が離宮を営んだ。さらに宇多天皇の所領となり、源重信所有となっていたものを、その死後、藤原道長が重信の未亡人から譲り受け、その子の頼通に伝領された。そして永承7年(1052)、頼通によって寺に改められ平等院と号した。永承7年は、当時広く信じられていた「末法思想」の末法初年にあたるとされ、極楽浄土を願う浄土信仰が、社会に広がっていた時期である。 天喜元年(1053)には鳳凰堂(阿弥陀堂)が完成し、華やかな極楽浄土の世界が現出された。その美しさは、当時の人々にどのような感動を与えたのだろうか。末法の世に現れた極楽浄土は、1000年を経た現在も当時の姿を残し、平安人の極楽浄土に対する思いを感じることができる。 ![]() 平等院鳳凰堂を横から見る 参考文献 大熊恒靖「梵鐘の音の部分音に関する時代的変遷」日本音響学会誌54巻第2号(1998) 文化庁監修 杉山洋「日本の美術355—梵鐘−」至文堂(1995) ・http://www.byodoin.or.jp/ 平等院オフィシャルサイト
《次回、園城寺(三井寺)鐘》
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