|
...................... |
|
伝統的なからくり玩具は、自然の力や身近な材料を駆使しながら様々な動きを考案した人間の知恵がつまった玩具である。そうしたからくり玩具たちとおもちゃ美術館で出あうことができたのは、何とも幸運なことであった。 その展示されているなかで、ひと際目立つからくり玩具が私に訴えかけてきた。熊本市の伝統的なからくり玩具である「おばけの金太」(図1)である。 「おばけの金太」・・・。何ともユニークなネーミングである。しかし、ネーミングとは裏腹に独特な雰囲気を持っており、とても可愛いとは言いがたいというのが率直な感想である。しかも、さらし首のように頭だけの存在感が何とも不意味に感じられる。 この人形が生み出された熊本では「目くり出し人形」とも言われているらしい。材質が木と紙でできた黒い烏帽子に真っ赤な顔は、一度みただけでも強烈な印象を受ける。その上、頭の後ろに出ているひもを引くと、白目をむいて舌を突き出す仕組み(図2)は、小さな子どもがみたら泣き出すに違いない。暗闇でこのからくり玩具と遭遇したら、大人でもかなりドキッとするはずである。 この「おばけの金太」は、加藤清正公が熊本城築城した頃、風貌が滑稽で冗談を言って周りの人を笑わせていた足軽の金太という人物をモチーフにしているらしい。だから本当の金太は、「おばけの金太」ではなく、「おどけの金太」だったようだ。嘉永年間に人形師・西陣屋彦七が金太の伝説をもとにからくり人形を作ったことが、このように何ともひょうきんな姿を生み出した。 ひもを引くと、頭の中に仕込まれた竹バネが目と舌を動かすように調整されている。日本などアジアの地域にとって竹は、容易に手に入る材料として昔から様々なものに使われてきた。そんな竹の弾力を竹バネとして使ったこの仕掛けは、やはり職人としての人形師が作るものだと感動してしまう。ひもの引き具合で微妙な表情を作り出すこの人形は、簡単な仕組みのようにみえながら、人形師が作り出す繊細さを感じずにはいられない。表面の胡粉やにかわを使って仕上げてあるところなどは、昔からの職人の卓越した技術が使用されており、あらためて先人たちの知恵が凝縮されていることに驚かされる。紙を使った張り子とは思えないほどの繊細さに感心だ。 そういえば、この金太のように紙を使って張り子を作る工程を利用して、石の模刻を大学のゼミナールで制作している。新聞紙と和紙を使って本物の石に貼り付けて型取り、ナイフで切り込みを入れて中の石を取り出し、切り込みを貼り合わせて表面を石とそっくりに着色するといったものである。簡単に立体を作りながら、アクリル絵の具の使い方を理解する題材に適しているので取り入れている。立体が紙でできるという容易さと、だまし絵のように騙されるような本物そっくりの立体作品となることに、学生たちは制作を楽しむことができるようだ。 「おばけの金太」・・・。単純な仕組みの中にある繊細さ。とても風貌からは想像できないかもしれないが、人の手で作られたあたたかさが、このからくり人形にはあるのではないだろうか。 現在では、西陣屋十代目・厚賀人形店で作られている。
<参考資料> ・川崎巨泉「おもちゃ画譜」1979村田書店 ・有坂與太郎「日本玩具史」1935建設社 ・おもちゃ美術館 http://www.toy-art.co.jp/museum.html ・東京おもちゃ美術館 http://www13.plala.or.jp/goodtoy/ttm/ ・厚賀人形店 十代目厚賀新八郎作「おばけの金太」 |