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イメージ 連載:温故知新3 〜人体彫刻制作における“型とかたち” 4〜
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イメージ 矢野 真
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0世紀後半になって、人体から直接型を取ってかたちにする「直取り」がタブー視されているなかで、あえて「直取り」を用いた作品を発表する作家が現れたことは画期的であった。技法や表現が多様化する1960年代以降、ジョージ・シーガルらが石膏を主とする「直取り」を用いた作品の発表を行い、そこから次第に「直取り」を一つの表現として取り入れる造形作家が現れるようになった。
 そこで、「直取り」の制作技法を用いた制作を行う代表的な作家としてジョージ・シーガルを取り上げてみたい。さらに筆者自身の「直取り」技法を紹介することにより、造形における「直取り」の今日的意味について考察を深めてみたい。
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 もともとは画家であったジョージ・シーガル(George Segal)は、1961年に当時完成したばかりの医療用包帯を手に入れる。これはジョンソン&ジョンソン研究所による折骨の固定をするための石膏で処理された長い布であり、体の形にあわせる前に、バケツに入れたぬるま湯に浸して使用する。シーガルはこの年、石膏帯による「直取り」によって「テーブルについた男」(註1)を完成させた。ここからシーガルの「直取り」という表現手段が始まった。シーガルはこの材料について、使用中は水のように柔軟で、水との反応により硬化して強度を持つ質感が気に入っていたようである。人体に貼るときは、その時々によって違うが、大体3mm程度の厚みをもたせて制作を行い、作品にしている。この完成したかたちを、さらにブロンズに置き換えることにより、耐久性を高めて屋外のモニュメントにしている作品も多数ある。
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「直取り」について、シーガルは次のように述べている(註2)
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 『型抜き(「直取り」)について述べるならば、とても予期しえなかったような神秘が生まれること、そして、それがいつも違っているということを明言することができます。ある人がある場所にいて、石膏を浸した何枚もの布がその人に貼りつけられ、貼った部分が固まるまで、じっと座っていてもらうといった簡単な行為が、まったく予期しえない副次的結果を生みだすのです。私は、だからこそ、型抜きを続けるのだと思っています。そうでなかったのなら、私は、退屈して悲嘆にくれ、とっくに別のなにものかになってしまっていたことでしょう。なによりもまず、湿っているということで、衣服の下の筋肉や骨が明らかになるのです。それが服にしみ込んで、ついには、その下にある骨組みまで目にみえるようにするのです。』
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 このように、医療用包帯を用いたジョージ・シーガルの直接的なリアリティは、当時の美術家には否定されたにもかかわらず、造形性よりも実際の人間のリアリティを重要視するために、「直取り」を用いて制作を行ったということがわかる。予期しえなかった神秘性や副次的結果への期待は、「直取り」でこそ得られるものだったということがいえる。
 つまり、「直取り」を用いて制作を行うシーガルの作品は、実物そっくりのリアリティやしわなどのマテリアルの強さを求めているように見えながら、人間の価値や人間そのもののリアリティを浮かび上がらせてそれを追求していることがわかる。
 ルネッサンスから19世紀にみられる作品のような「直取り」の歴史的背景とは全く異なり、新しい造形性としての人間のリアリティを追求する一手段として、肯定的に「直取り」が用いられている。「直取り」を制作における様々な素材や技法を結びつけることにより、人体彫刻の表現の「多様さ」、そして「新たなかたち」を生み出す結果につなげているということがいえるのではないだろうか。
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「直取り」を用いた筆者作品(「輪廻-1814」)
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註1)「テーブルについた男」1961年,石膏・木・ガラス,134.6×121.9×121.9cm,Stadtische Museum Abteiberg
註2)フィリス・タックマン 著,酒井忠康・水上勉 訳(1990):『ジョージ・シーガル』.美術出版,p109「1967年2月28日、オルブライト・ノックス・アート・ギャラリーでの講演」より
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<参考資料>
・ 矢野 真「型とかたち-人体彫刻制作における『直取り』のもつ意味」2006美術解剖学雑誌第10巻第1号pp28-37
・ 高橋幸次「レアリスム時代の彫刻」『世界美術大全集第21巻』1993小学館pp356
・ 中原佑介(1987):『現代彫刻』.初版,美術出版社
・ エドワード・ルーシー=スミス 著,岡田隆彦・水上勉 訳(1986):『現代美術の流れ』.初版,PARCO出版
・ フィリス・タックマン 著,酒井忠康・水上勉 訳(1990):『ジョージ・シーガル』.初版,美術出版社
・ 東京国立近代美術館編(1996):『身体と表現 1920-1980ポンピドゥーセンター所蔵作品から』.NHK

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