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イメージ 連載:温故知新3 〜人体彫刻制作における“型とかたち” 1〜
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イメージ 矢野 真
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は他人に自己紹介をするとき、必ず「造形作家です」と名乗ることにしている。
私の作品は、木彫をベースとして合成樹脂と組み合わせた人体表現を中心とした立体作品であり、このスタイルに行き着くまでには10年以上の歳月を費やした(図1)。木彫をベースとしているのであるから、絵画や彫刻、工芸といった分類をあえてするならば、彫刻ということになるだろう。しかし、決して「彫刻家です」と名乗ることはしない。どうしてかと問われるかもしれないが、それには大きな理由がある。
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 現在、私は人体彫刻を中心に制作しているのであるが、その作品には必ず「直取り」技法を用いている。「直取り」技法とは、人体の顔や手などの体の一部分を本物のモデルから型を取り、それを他の素材(私の場合はエポキシのモデリングペースト)に置き換え、作品の一部として取り入れる技法である。美術の世界において、この技法は一般的かというとそうではない。逆にこの技法は、美術の世界、特に彫刻の世界では敬遠されていることが多い。これが私の「彫刻家です」と名乗らない大きな理由であるといってよい。
 かつて近代彫刻の父と称されるオーギュスト・ロダン(Auguste Rodin, 1840−1917)の彫刻作品「青銅時代」が著しく写実性をおびていたため、人体から直接型を取られたものと思われ、非難を浴びたことがあった。人体から直接型を取ってかたちをつくる、いわゆる「直取り」の技法は、現在でもマネキン制作や局所的には歯科医療や義手・義足制作にも活用されている。美術解剖学分野においては、人体のポーズの再現性や形の記録を目的とした生体計測や造形作品の比較などに扱われている。遡れば、「直取り」技法は、写実性に重きをおいたルネッサンス時代からあり、16世紀頃、蝋を用いた人体解剖模型のための「直取り」技法では、科学的な側面から重要な意義をもっていたということがうかがえる(La Specola)。
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 現代美術では、技法や表現が多様化する1960年代以降のジョージ・シーガル(George Segal, 1924−2000)らが石膏を主とする「直取り」技法を用いた作品を発表して以来、「直取り」技法を一つの表現として取り入れる造形作家が現れるようになった。しかし、「直取り」技法を表現手段とする造形作家がいるにもかかわらず、美術における造形作品としての「直取り」技法は、造形的な苦労の少ない、インスタントな再現にすぎないというように思い込まれ、今日なお軽視されていることが多いように感じられる。「直取り」技法がシーガルをはじめとして多様化した表現の一手段として、十分に優れた作品として認知されていることを考えれば、もっと肯定されてもよいはずなのだが。
 「直取り」技法に対する軽視はどのような理由に起因するのであろうか。また、「直取り」技法によって今日、どのような美術表現が可能なのだろうか。そして、「直取り」技法ならではの長所があるならば、それはどのようなものなのだろうか。
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 このように「直取り」技法をああでもないこうでもないと考えて制作をしている中、「彫刻家です」とは名乗り辛い現実がある。そこで今回はこの問題を取り上げてみたいと思う。「直取り」技法、ここでは人体彫刻制作における一手段として型を取ってかたちをつくる「直取り」技法について、「直取り」技法の歴史的背景を明らかにしながら、この技法を木彫と組み合わせ制作を続けている私自身の立場から考えてみたい。そして、「直取り」技法によって生じるテクスチャーやリアルさ、またその表現効果について取り上げながら、今後の人体彫刻制作における「直取り」技法の持つ意味や、新たな可能性を考えてみたいと思う。
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(図1)「直取り」技法を用いた作品
(輪廻―1507)
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<参考資料>
・ 矢野 真「型とかたち−人体彫刻制作における『直取り』のもつ意味」2006美術解剖学雑誌 第10巻第1号pp28−37
・ 中原佑介「現代彫刻」1987美術出版社
・ エドワード・ルーシー=スミス 著,岡田隆彦・水上勉 訳 「現代美術の流れ」1986PARCO出版
・ フィリス・タックマン 著,酒井忠康・水上勉 訳「ジョージ・シーガル」1990美術出版社
・ フランス国立ロダン美術館監修「ロダン事典」2005淡交社
・ Sam Hunter / Don Hawthorne「GEORGE SEGAL」1988Ediciones Poligrafa,S.A
・ Monika Von During「Encyclopaedia Anatomica」2001TASCHEN
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