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イメージ 連載:温故知新2〜ラグーザ作『山尾庸三像』の石膏原型に触れた時 4〜
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イメージ 矢野 真
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座部分と胸像部分それぞれの形状は、破片を接合していくことによって、おおよその形状を復元することができた。しかし、台座部と胸像部における正確な接合角度・方向などを出せないため、借用したブロンズ像をもとにゲージを制作した。そのゲージを使用し、石膏原型の胸像部分を吊り下げた状態で位置を割り出して固定し、台座部分とつなぎ合わせる方法をとることにした。
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 ゲージはブロンズ像のサイズを基準にして制作を行った。材料は、シナランバー(30mm厚・900×900mm)、栂(つが)の無地タルキ(45×35mm角)、杉の無地小割(30×20mm角)、木ネジなどである。水平をしっかりと取った基準面となる底面にシナランバーを使用し、50mmごとに計測線を引き、栂の無地タルキを用いて、高さ1200mm、幅900mm、奥行き900mmの大きさの胸像部吊り下げ可能なオリジナルのゲージ枠をつくった(図1)。そのゲージ枠にブロンズ像を設置し、ポイントを決めてマーキングしながら計測を行った(図2)。特に石膏原型とブロンズ像が合わせやすい位置をポイントとした(図3)。
 次に、ブロンズ像のポイントに従って、石膏原型のサイズを計測することにより、このブロンズ像の収縮率を算出した。原型からブロンズ像を取る場合、原型よりもブロンズは収縮するのである。まったく同じ大きさであれば問題がないのに厄介な話である。計測の結果、平均で0.674%収縮していることがわかった。
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 ところで、この石膏原型を修復するためには石膏を使わなければならない。しかし、原型が制作された時代と石膏の質が同じかというと、我々には判断がつかない。そこで、当時の石膏材質について、下村石膏株式会社技術部研究室に調査協力を依頼した。
 それによると、当時の焼石膏は主に中国や地中海沿岸からの輸入原石を原料としたもので、粉砕技術が進んでいなかったため、石膏自体の粒度は粗く、時間調整剤とし添加されていた消石灰が粒度を下げる役割で多く使用されていた。その上、原石に含まれる粘土鉱物などの不純物を除去する技法なども未熟なため、石膏自体の純度は、現在の98%以上と比較して格段に低い90%であったと思われるとの結果であった。
 そのため現在の石膏で当時の造形物を補修する場合、純度や粒度、混水量などの違いを除けば、基本的には化学的に同じ石膏硫酸カルシウムなので問題はないと思われるが、補修という点で方法に技術的な問題点が考えられるということであった。例えば、補修石膏の接着性の問題や、ベースが補修石膏の水分を吸収してしまうため、石膏粒子の硬化緻密度が異なり、補修部分の色調が暗くなってしまうことが考えられる。その他にも、古い石膏部分に添加使用されていた消石灰が長期間で炭酸カルシウムに変化したことからの色調の違いも考えられるということであった。
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 現在の石膏製品で補修を行うとしたら、A級石膏が適当であると考えられるが、混水量を通常の70%よりも高い80〜90%で使用し、流動性が失われてくる硬化間近のタイミングで盛りつけるなどの工夫を要するとのことであった。  そこで、A級石膏を使用することに決定し、修復における接着性の問題や盛りつけのタイミングなどを十分検討することにした。  いよいよ、ここからが技術的な本番である。
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(図1)ブロンズ像を基準に計測用のゲージをつくる
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(図2)マーキングのための計測用ゲージ
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(図3)鼻と頭部にポイントを合わせる
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<参考資料>
・ 木村 毅 編「ラグーザお玉 自叙伝」1980 恒文社
・ 金子一夫「近代日本美術教育の研究 明治・大正時代」1999 中央公論美術出版
・ 高村光雲「高村光雲懐古談」1970 新人物往来社
・ 東京国立近代美術館 編「フォンタネージ,ラグーザと明治前期の美術」1977 東京国立近代美術館
・ 河上 眞理「ヴィンチェンツォ・ラグーザ伝の検討−マリオ・オリヴェーリ著『大理石の芸術家』を中心に−」早稲田大学 地中海研究所 オンライン版 地中海研究所紀要 第2号,pp29−43
・ 澄川喜一、本郷 寛、矢野 真、大沼邦康「ヴィンチェンツォ・ラグーザ作『山尾庸三像』石膏原型修復とブロンズ像収蔵について」 2002 東京芸術大学美術学部紀要第37号,pp5−16
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*次回は6月上旬掲載予定
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