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イメージ 連載:温故知新2〜ラグーザ作『山尾庸三像』の石膏原型に触れた時 3〜
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イメージ 矢野 真
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れを本当に修復するのかと思った時、感動する気持ちとは裏腹に、厄介な仕事が舞い込んできたなという気分になった。というのも、横たわっている石膏原型は、台座部分の破損がひどく、大きな破片のみではなく、屑状の破片もあったからである。
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 台座は隙間なく石膏で充填された状態で、7つのパーツに壊れていた。その脇には直径が15mmで長さ220mmの鉄棒があり、その鉄棒が台座中心に、縦に埋没されていた痕跡(図1)が確認できた。年月が経った鉄棒はかなりの錆で、周りの石膏はそれによって浸食され変色している状態であった。これは胸像部分(図2)との接合の補強用心棒として使用されていたと考えられる。この状況と像の破損状態をみると、この像は台座部分と胸像部分が別々に石膏で制作され、後でつなぎ合わされたことがわかる。とりあえず台座部分は大きな破片をつなぎ合わせ、全体の形状をおおよそ確認することができた。
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 胸像本体表面にも数箇所にわたり小さな欠損がみられた。またそれとは別に、鋳造(ブロンズ像にする)の過程でできたとみられる細かい破損箇所も確認できたが、一応の修理がなされたような跡として残っていた。台座部分と胸像部分は、破片の接合により、おおよそ復元できる状況ではあったが、接合部分がかなり細かく粉砕されていたため、復元における接合角度・高さ位置等の判断が大変難しい状態だった。接合角度・高さ位置が少しでも変わってしまえば、それは「山尾庸三像」そのものではなくなってしまう。
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 このことで思い出したのが、有名なミロのヴィーナスを型取った頭部の石膏像である。デッサンの基礎的な練習を行うときに使われる像であり、高校時代の私はこれに幾度も挑戦して描いた。しかし、どうしてもあの有名なミロのヴィーナスにならなかった。疑問に思いながら少しでも本物に近づけようと描いていた時にふと気がついた。本物のミロのヴィーナスは重心を片方にかけているので、正面から観た場合、首が斜めになっているが、ヴィーナス頭部の石膏像は垂直に立っている。そのため本物のミロのヴィーナスと印象が違うのだ。ラグーザの作品をこれと同じ目に逢わせるわけにはいかなかった。寸分違わずラグーザ作「山尾庸三像」として完成させなければならない。そう考えると、修復を専門としている方々の偉大さをあらためて思い知らされる。この作品をそっくりに修復するためには、本物がどうなっていたのかということが分かる写真資料か石膏原型のレプリカが必要なのだ。しかし、その心配はいらなかった。石膏原型というぐらいだから、それをもとにしたブロンズ像が実は存在しているのである。そこで、昭和6年にこの石膏原型から鋳造したとされるブロンズ像を借用し、それをもとに計測を行い、接合することになった。
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 胸部及び肩部は全体にかなり厚く成形され、頭部は台座部と同様に石膏が充填された状態であった。全体の裏打ち補強と台座部分と胸像部分の接合等を進めるにあたって、石膏原型の中に心棒が入っていないかを調べる必要があった。そこで、石膏原型のX線撮影を行った。作品の見えない内部に触れるという緊張の瞬間だ。しかし、それは制作者として一番知られたくない部分なのかもしれないが・・・。
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 その結果、頭部から首にかけて補強用としての針金が埋まっていることが確認できた(図3)。また、かなりの厚さをもった胸下部にも同様の針金が埋まっていることが確認された(図4)。おそらくこれは、台座との連結を補強するために使用されていたのであろう。しかし、この針金は鉄棒と同じように著しく錆が出ていて、これをそのまま使用して補強を行うことは困難であると判断し、新たな補強を必要な箇所に入れ直して修復することにした。
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(図1)鉄棒が埋没されていた痕跡が確認できる
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(図2)胸像部分との接合の痕跡
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(図3)頭部から胸部にかけてのX線写真
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(図4)胸部のX線写真
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<参考資料>
・ 木村 毅 編「ラグーザお玉 自叙伝」1980 恒文社
・ 金子一夫「近代日本美術教育の研究 明治・大正時代」1999 中央公論美術出版
・ 高村光雲「高村光雲懐古談」1970 新人物往来社
・ 東京国立近代美術館 編「フォンタネージ,ラグーザと明治前期の美術」1977 東京国立近代美術館
・ 河上 眞理「ヴィンチェンツォ・ラグーザ伝の検討−マリオ・オリヴェーリ著『大理石の芸術家』を中心に−」早稲田大学 地中海研究所 オンライン版 地中海研究所紀要 第2号,pp29−43
・ 澄川喜一、本郷 寛、矢野 真、大沼邦康「ヴィンチェンツォ・ラグーザ作『山尾庸三像』石膏原型修復とブロンズ像収蔵について」 2002 東京芸術大学美術学部紀要第37号,pp5−16
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*次回は5月上旬掲載予定
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