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イメージ 連載:温故知新1〜オランダ燈籠・模刻制作記録〜
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イメージ 矢野 真
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本との貿易独占といった政治的に最大の効果をねらったとはいえ、あのような大きく手の込んだ真鍮製の燈籠を日本に献納したオランダ人の労力は大変なものである。それは、実際に模刻(レプリカ)を制作した者であるからこそよくわかる。何しろ細工は細かいくせに3メートルの高さもある。パーツも多く、おまけに総重量が4523ポンド(約2トン)もある。
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 模刻制作の工程は大きく分けて(1)測量、(2)図面作成、(3)原形制作、(4)鋳造、(5)仕上げ、(6)組み立ての順である。
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 まずは測量班が日光東照宮に赴き、本物のオランダ燈籠の測量を行った。実際に測ることは当たり前だが、測れない場所はsinθやcosθなど、数学、いやいや算数の弱い私にとってまったく解らない宇宙人のような記号を使って測量を行った。それにしても、現代の計測技術は大したものだ。かなり正確な測量のあと、測量値と写真をもとに平面図にする。それをもとにして粘土や合成樹脂、部分によっては木型を使って原形の制作を行うのであるが、ここで必ず行わなければならないことがある。原形制作の図面の寸法を少し大きく記入し直さなければならないのである。何でも、真鍮で鋳物にした時に収縮する値や組み立て時の微調整のために、あらかじめ寸法を足してあるのだという。この時は若干の余裕をとって、1.015倍で寸法が調整された。(つまり、1m=1000mmの長さのものを制作するときは1015mmにしなければいけない)
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 さて、模刻は本物そっくりに制作することが重要である。かたちを起こすということも単純ではない。本物から直接型取りをできれば簡単なのであるが、なんといっても本物のオランダ燈籠は文化財であり、とても分解して各パーツを型取りすることなんてできない。ましてや、1.015倍で制作しなければ一回り小さい燈籠が出来上がってしまう。そこで、粘土を使ってひとつひとつのパーツを手づくりで制作していく。燈籠は規則正しいパターンがあるため、同じかたちのものは同じ原形から何個も取ることが可能である。とはいえ、ひとつひとつ手作業で原形を制作することはなかなか骨の折れることである。
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 本物のかたちで興味深いことは、燈籠の上部に設置されている将軍徳川家の葵紋が逆さになっていることである。おそらく制作する時のミスであろうか。あれほど壮大で完璧な燈籠のなかにも、このようなことがあることに職人の手仕事が感じられ、何ともほほえましい。
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 一つひとつのパーツの石膏原形が完成した後は、その原形を鋳造の専門家にお任せする。しばらくすると、すべてのパーツが真鍮に姿を変え、ずっしりとした重みを手土産にして戻ってきた。それぞれのパーツは表面を研磨し、つなぎ合わせる箇所や磨きの必要な箇所にヤスリのついたディスクグラインダーなどで微調整しながら、ドリルで穴をあけるなど組み立てに必要な加工を行った。部品一つひとつの曲線が何ともいいかたちである。無駄なかたちが一切ない。渦巻やイルカの姿を思わせる曲線などの装飾は日本の建造物にはふさわしくないかもしれないが、オランダの真鍮細工師の技を強く感じる。そして、なによりも模刻を通して感じることは、当時の制作者の熱意である。たとえ「献上品」としての政治的意図があったとしても、作者の作品への思いには政治的なものが一切感じられない。こうした真鍮細工師の純粋な気持ちと作品への情熱は、模刻制作を通してでなければ学ぶことができなかったであろう。
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<参考資料>
・Th.H.ルンシング・スヘルレール著、太宰隆訳
 『日光東照宮のオランダ燈籠』オランダ外務省 1980
・村上直次郎訳『長崎オランダ商館の日記』岩波書店 1980
・日光社寺文化財保存会
 『重要文化財東照宮 神輿舎、東通用御門、表門附簓子塀内番所燈台穂屋(八角)燈台穂屋修理工事報告書』1981
http://www.pref.nagasaki.jp/nichiran/ 長崎県文化財調査報告 日蘭関係資料
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図1 燈籠制作のための各パーツ
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図2 図面や写真をもとにして原形を制作する
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図3 測量した燈籠と同じ型をつくり、それをもとに粘土で成形する
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図4 石膏で原形を制作する
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図5 かたちに応じて木型を用いて原形を制作する
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図6 石膏による原形
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図7 石膏から真鍮に鋳造されたパーツ
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図8 葵紋がさかさまについている(実物)
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図9 美しい装飾に真鍮細工職人の技を感じる
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《次回は1月初旬掲載》
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