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連載:芋のおもしろ大変身 〜江戸時代の料理書「甘藷百珍」〜

津路野 里子

テーマ 「芋のおもしろ大変身」〔3〕
藷精(いものじん)

藷精は「いものじん」と読み、サツマイモの澱粉の事をいいます。店でも簡単に手に入れることができます。ですが、作ってみると案外簡単に綺麗に作れるので手作りがお勧めです。




生にて擦し、水に入、銅篩にてこし、其水を淘(いせ)、底にしづみたる精をとり、水四、五度もかへ、日に乾し、たくはへ置、時に臨て用ゆ。尤、寒中の制を佳とす。△葛の代りにつかひて、吉野葛上品に勝れり。たくはへ置て平常用ゆべし。

(いもを生のままおろし、水に入れて、すいのうでこし、その水を流し、底に沈んだ精をとり、水を四、五回かえる。そののち陽で乾かし、たくわえて置いて、必要な時に取り出して使う。寒中に作ったものがもっともよい。葛の代わりに使っても、吉野葛の上等なものよりすぐれている。貯蔵して常々使用するとよい。)

吉野葛:葛粉は葛の根からとった澱粉で、大和国 ( 奈良県 ) 吉野地方で産する葛粉を吉野葛という。古来、葛粉の中で最上等品とされる。高級料理に用いられ、吉野という名がついた料理はこの葛粉を使っている。

藷精:藷精は、甘藷澱粉といわれスーパーにも売られていて値段も安価です。
右の写真の「わらび餅粉」は、裏面の原材料名に、甘藷澱粉と表示してあります。
甘藷澱粉なのに「わらび餅粉」というのは、これでわらび餅を作るとわらび餅のような食感が味わえるからです。




商品名:わらび餅粉
原材料名:甘藷澱粉
内容量:180g
製造者:日の出製粉株式会社



藷精の材料および調理法の時代的考察

馬尾篩(まのおこし):馬尾篩とは、享保4年(1719)には、あった道具で、食品の水を切ったり漉したりするものです(1)。名のとおり馬の尾の毛が用いられた篩で枠は簡単なものには木の皮を曲げた物がありましたが、一般にはへぎ板を輪にして桜の木の皮で縫った曲げ物が用いられていました(2)
水:江戸時代には、水売りといって飲み水を売る人がいました。それは、江戸は、埋め立てて作ってある土地のため、水道もなく井戸も町内に一箇所ぐらいしかなかったからです。江戸では玉川(多摩川。東京・神奈川県境で上流は東京都の上水道の水源)の水を桶に汲み上げ天秤棒でかつぎ、売り歩いたそうで(3)、冷たい湧き水は、ドンブリ1杯が4文でした(4)


作り方
1「藷精」(5)

藷精(50g)および藷精のかす(235g)
〈材料〉
薩摩芋(大)
1本(約325g)

〈道具〉 おろし金
ボウル
さらし2枚
〈作り方〉
〔1〕薩摩芋の皮をむき、すりおろし、さらしを2枚重ねに敷いたボウルの中に入れる。
〔2〕〔1〕に水を加えて、さらしを揉んで澱粉を搾り出す。
(この時にさらしに残ったものを藷精のかすという。)
〔3〕〔2〕を静置すると30分ほどで澱粉がボウルの底に沈む。
〔4〕上澄み液捨て、新しい水を加えて混ぜる。上澄み液に色がつかなくなるまで、〔3〕と〔4〕を3〜4回繰り返す。
〔5〕底に沈んだ白い澱粉を残し上澄み液を捨てる。
〔6〕日光に当て、乾かす。



左:藷の精のかす 右:藷精と水


底に澱粉が沈む

※藷精のかすも食べる事が出来ます。使い道は、次回紹介します。

次回は、藷精のかすを使う絶品料理を紹介します。お楽しみに!!

参考文献
(1)三輪茂雄『ものと人間の文化史61・篩(ふるい)』、法政大学出版局、P.42 
(2)川上行藏・西村元三郎『日本料理由来事典』中、同朋舎出版、1987、P.9
(3)川上行藏・西村元三郎『日本料理由来事典』中、同朋舎出版、1987、P.443
(4)棚橋正博・村田裕司『絵でよむ江戸のくらし風俗大事典』、2004、P.287
(5)武田英之『そだててあそぼうサツマイモの絵本』、農山漁村文化協会、1997、P.26

《次回は2月初旬掲載予定》


プロフィール:
津路野里子(つじの・りこ)
栄養士
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