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イメージ いにしえの旅 : No.07

イメージウンスンカルタ
国際色豊かな75枚 江戸期に人気集め
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イメージ【図1】ウンスンカルタ
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 「うんともすんとも」とは、どうにも手詰まりで何も言わなくなってしまった様子をいうが、想像するに、ウンスンカルタで遊んでいて行き詰まってしまった様子からはじまったのだろうか。
 ポルトガル語でウンは「一」、スンは「最高」を意味する。そもそもカルタという言葉自体がポルトガル語からきたもので、図柄をみても西洋のカルタの影響を強く受けている。ウンスンカルタは、ポルトガルから伝わったカルタを日本風にアレンジしたものである。
 一枚一枚丁寧に描かれたカルタたちは、一組で七十五枚、裏には金泥(きんでい)を塗って美しく仕上げられている。どの札も個性的で、手仕事ならではの温かみがあって見飽きることがない。
 【図1】ではカルタを各十五枚ずつ五段に並べているが、各段でトランプのように同じ紋があるのにお気づきになろう。一段目はコップ(酒杯)、つづいてイス(剣)、オウル(貨幣)、ハウ(棍棒(こんぼう))、クル(巴紋)と呼ばれる。さらに左から一列目の五枚をウン、二列目の五枚をスンと呼ぶ。ウンは福々しく太った布袋さん、頭が長くて剣を持った福禄寿(ふくろくじゆ)、鯛(たい)を片手の恵比寿さん【図2】に米俵に乗った大黒さんという七福神から抜擢(ばつてき)された四人プラス赤い衣の達磨(だるま)さんである。スンは、五枚とも黒い冠をかぶった中国風の服装の男性が描かれる。三列目の五枚はソータと呼ばれる。西洋風の服装をした女性らしき人物で、うち二枚は剣と棍棒であたかも竜をひっぱたこうかという場面に見える。ただし、棍棒【図3】と巴紋(ともえもん)の人物には口ひげがあり、女性だか男性だか分からない不思議な絵である。右端の列の五枚はウマ、その左側の列の五枚はコシと呼ばれ、それぞれ騎士と箱に腰掛けた武人を描くが、身にまとったものには日本風も西洋風もある。このように日本、中国、西洋の風俗が入り交じって、たいそう国際色が豊かである。
 かなり手の込んだ作りのカルタであるが、手擦れの跡があり、手あかもたくさんこびり付いていることから、観賞用ではなく使い込まれた実用品だったことが分かる。カードゲームは、テレビゲーム全盛の現代でも子供から大人まで楽しめる遊びであるが、このカルタが使われていた江戸時代には、どちらかというと大人が夢中になっていたのだろう。そうであれば、単なる勝った負けただけで大人が満足するはずもなく、金銭をかけた熾烈(しれつ)な戦いに使われていたに違いない。盛んになり過ぎたカルタとばくは、寛政の改革(一七八七―一七九三)で禁止されて以後は廃れたといわれている。ウンスンカルタの版木が残っているので、当時は印刷されたカルタもたくさん用いられていたことだろう。茶碗(ちゃわん)などの焼き物や漆器にもカルタの図柄をつけたものがあって、人々に愛されていたことを思わせる。今でも、熊本県人吉市ではウンスンカルタの遊びが行われている。
 通説では、ウンスンカルタが初めて作られたのは十七世紀後半とされているが、このカルタの画風からみると半世紀ほどはさかのぼる可能性がある。とすれば、ポルトガル人がまだ日本を訪れていた最後のころか、追放された直後あたりの時代である。想像をたくましくすれば、日本人とポルトガル人の間で、この札を使って大金をかけた白熱したカルタ合戦が繰り広げられ、日ポ親善に一役買っていたかもしれない。
 全七十五枚を見渡しても、後から描き加えたような札は一枚もなく、すべてが初めからあった一そろいである。知られている限りでは、これだけ古い時代のもので一枚も欠けずにそろっているのは当館のものだけで、カルタとはいえ大変貴重なものといえる。
 ご来館の折りには、手にとって遊んでいただきたいところだが、十分に働いて引退したカルタたちなのでそうもいかず残念です。しかし、ぜひ、ゆっくりとご対面いただき、お気に入りの一枚を見つけてみてください。
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【図2】ウンの恵比寿さん
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【図3】ソータのうちハウ
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□ キーワード □
ポルトガル
15世紀から始まる大航海時代をスペインとともにリードした。1543年ごろ、日本に鉄砲を伝え、以後、南蛮貿易を行うとともにキリスト教を布教した。1639年、キリスト教を禁止する幕府によって、来航を禁じられ交流が途絶えた。
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案内人 藤田励夫(ふじた・れいお)
九州国立博物館学芸部博物館科学課保存修復室長
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