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プライスコレクション 若冲と江戸絵画 The Price Collection JAKUCHU and The Age of Imagination 平成19年1月1日(月)〜3月11日(日) [旧会期]平成19年1月1日〜2月25日 特別展示室 ![]() アメリカ・カリフォルニアのプライスコレクションは、魅力に満ちた江戸絵画のコレクションとして世界的に知られています。半世紀前、ジョー・プライス氏は、日本の美術史家にも見過ごされていた江戸時代の個性的な画家たちの作品に目を奪われ、蒐集を始めました。氏のコレクションの中核は、近年注目を集めるようになった伊藤若冲の作品ですが、ほかに円山応挙(まるやまおうきょ)、長沢芦雪(ながさわろせつ)、森狙仙(もりそせん)を中心とした上方の画家や、酒井抱一(さかいほういつ)、鈴木其一(すずききいつ)など江戸琳派の画家たちの優れた作品も数多く蒐集されています。本展覧会では、プライスコレクションの約600点の絵画作品の中から、選りすぐりの109点を展示します。 .................................................................................... 特別展のみどころ - 江戸のモダニストたち - 第1回 伊藤若冲 [読む] 特別展のみどころ - 江戸のモダニストたち - 第2回 長沢芦雪 [読む] 特別展のみどころ - 江戸のモダニストたち - 第3回 酒井抱一 [読む] ジョー・プライス氏インタビュー『コレクションの魅力』 [読む] 2月6日、展示替え作品紹介 [読む] ....................................................................................
ジョー・プライス氏は、伊藤若冲の魅力をいち早く見出した人物です。 彼と若冲との出会いは、今や伝説として語られています。プライス氏が父親の友人であった建築家フランク・ロイド・ライトと訪れたニューヨーク。東洋美術のコレクターでもあったライトの付き添いで立ち寄った古美術店で、葡萄を描いた水墨画に心惹かれたプライス氏は、大学の卒業記念として買うはずのスポーツカーの代わりに、名前も知らない画家の1枚の絵を手にしたのです。これが、伊藤若冲の「葡萄図」です。これは1953年、彼が24歳の時のエピソードです。この時からプライス氏の江戸絵画コレクションが始まりました。画家の名前や伝記を知らずに、ただ見て気に入ったものだけを集めたコレクション。後に最初の1点を含め多くが若冲作品であったことがわかるのですから、独特の一貫した鑑識眼に驚かされます。
江戸絵画と言えば、狩野探幽(かのうたんゆう)に始まる江戸狩野派、俵屋宗達(たわらやそうたつ)・尾形光琳(おがたこうりん)の琳派、江戸時代後半の浮世絵版画や文人画が語られてきました。ところが、プライスコレクションにはこれらの作品が少ないのです。伊藤若冲の作品および若冲と同時代の18世紀後半の京都の画家の作品がコレクションの中核となっています。さらにプライスコレクションでは、琳派でも光琳より後、18世紀後半の酒井抱一ら江戸琳派の優品が系統的に集められています。コレクション作品に共通するのは、独自の自然観察眼と個性豊かな表現技術であり、その点が今注目を集めています。プライスコレクションは既成の江戸絵画観を変える力強い魅力にあふれたコレクションなのです。 1章 正統派絵画 江戸時代には、伝統にもとづいた絵画を制作する「狩野派」や「土佐派」などの流派が組織され、これらの画家は将軍や大名に仕える「御用絵師」として活躍しました。しかし、これらの流派は伝統の継承を重んじたため、自由で独創的な作品よりも、保守的な絵画を制作する傾向がありました。これは地位が約束された芸術家の宿命とも言えるものでした。 本章では、このような流派によって描かれた18世紀前半までの作品を紹介します。 しかし本特別展には、保守的な絵画ばかりではなく、個性的な自己を主張した優れた作品も多く展示されています。これは流派や画家の名前よりも、独創的で個性的な表現を重視したプライスコレクションの特徴を反映するものです。 □ 主な作品 ![]() 老松小禽図屏風(ろうしょうしょうきんずびょうぶ) 伝 狩野元信(かのうもとのぶ)筆 室町〜安土桃山時代・16世紀、紙本墨画、2曲1隻 出品作品の中で最も古い作品。襖絵を屏風に改装したもの。室町時代から江戸時代まで続く狩野派の基礎を築いた狩野元信晩年の様式で描かれている。元信自身ではなくその次世代の狩野派有力画家の筆になる。 18世紀後半は、日本文化がもっとも豊かに展開した時代でした。鎖国によって日本は、独自の文化を深めていったと同時に、より海外の文物に好奇心を抱くようになり、これが次の新しい文化を生み出す原動力となりました。特に京の画壇では、まったく新たな絵画表現が試みられていました。 幕府のある政治都市・江戸に対し、伝統文化を伝える京は、大寺院に優れた文化財が伝わる文化都市でした。その中で豊かな経済力を手にした商家・職人らは新興の「町衆」として、京の伝統を意識しながらも自由で想像力に満ちた絵画スタイルを成立させました。その代表画家である円山応挙(まるやまおうきょ1733〜95)の画風は、明治時代にまで継承されていきます。この応挙門下には、長沢芦雪(ながさわろせつ)に代表される個性豊かな画家も育っています。この章では、これらに併せて大阪・長崎の画家も合わせて紹介します。 □ 主な作品 ![]() 懸崖飛泉図屏風(けんがいひせんずびょうぶ) 円山応挙(まるやまおうきょ1733〜1795)筆 江戸時代・寛政元年(1789)、紙本墨画淡彩、4曲1隻・8曲1隻 円山応挙は写生を重んじたが、この作品は実景をそのまま写したというものではなく、写生を通して培った技法でとらえた個々のモチーフを組み合わせて構成した画面であろう。その平明な画風は、やがて呉春などの四条派へと受け継がれ、後の明治画壇にも影響を及ぼした。 ![]() 白象黒牛図屏風(はくぞうこくぎゅうずびょうぶ) 長沢芦雪(ながさわろせつ1754〜1799)筆 江戸時代・18世紀、紙本墨画、6曲1双 円山応挙の弟子たちの中でもひときわ異彩を放つ長沢芦雪の面目躍如と言うべき作品。画面からあふれんばかりの白象と黒牛に、2羽の烏と1匹の白い子犬を組み合わせ、黒白と大小の対比を重層的に際立たせている。 18世紀の日本では、文芸や造形などの多様な分野において新奇な試みが積極的に行われました。特に伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)の絵画は、常軌を逸するほどに独特な表現をみせますが、じつはプライス氏が光を当てるまで私たちは伊藤若冲の試みに注目することはほとんどありませんでした。 例えば、身近な鶏を、鳳凰のような伝統的なテーマに昇華させた若冲の絵画表現。ここには単に「異端」や「奇想」と言う以上に、現実の事物を伝統的な枠組みに置き換えて表現するという、当時の最先端の思潮をみることができます。 □ 主な作品 ![]() 紫陽花双鶏図(あじさいそうけいず) 伊藤若冲(いとうじゃくちゅう1716〜1800)筆 江戸時代・18世紀、絹本着色、1幅 若冲が得意とした鶏図の代表作。自然に対する観察眼と想像力が幻想的世界を生み、極細密の技術が非現実の世界に不思議な生命感を生み出している。家業を離れて画家生活に専念した40代初めの作品。東本願寺に伝来。 ![]() 鳥獣花木図屏風(ちょうじゅうかぼくずびょうぶ) 伊藤若冲(いとうじゃくちゅう1716〜1800)筆 江戸時代・18世紀、紙本着色、6曲1双(写真は右隻) モザイク画、升目(ますめ)描きと呼ばれその描法で近年注目を集めている作品。(落款は無いものの、この描法が若冲によるものであることは間違いない。)鳥や動物たちの楽園といった印象を受ける楽しさと描法のユニークさが人を惹きつける。一双で升目の数は、約86,000個。 ![]() 雪中松に兎・梅に鴉図屏風(せっちゅうまつにうさぎ・うめにからすずびょうぶ) 葛蛇玉(かつじゃぎょく1735〜1780)筆 江戸時代・安永3年(1774)、紙本墨画、6曲1双 降り積もる雪が漆黒の闇夜に映える。明暗が対比される冬の夜に、木にとまり空をとぶ白い兎と黒い鴉が印象的である。葛蛇玉は大坂の画家で、現存作品は本図を含めわずか4件のみである。 幕府がおかれた江戸は、比較的新しく造られた政治都市で、開幕当初はまだ独自の文化は誕生していませんでした。しかしこの新興都市は、18世紀には人口100万を超える世界第一の都市となり、武家と町人を担い手として独自の都市文化を生み出していきました。 江戸文化を代表するのは、菱川師宣(ひしかわもろのぶ?〜1694)にはじまる浮世絵です。プライスコレクションには、いわゆる美人画だけでなく、浮世に生きる人々の姿を生き生きと、時にユーモアたっぷりに描いた作品が多くあります。 「江戸の画家」では、風俗図や浮世絵をはじめ、江戸の文化を伝える河鍋暁斎(かわなべきょうさい1831〜89)、柴田是真(しばたぜしん1807〜91)の作品などを紹介します。 □ 主な作品 ![]() 二美人図(にびじんず) 勝川春章(かつかわしゅんしょう1726〜1792)筆 江戸時代・18世紀、絹本着色、1幅 桜咲く春の明け方、恋文をしたためる遊女のくつろいだ室内を描いている。遊女二人の細密で優雅な描写に対し、開け放たれた窓の外は英(はなぶさ)流の淡い水墨によって素朴に描かれている。その対比が春章らしい洗練を見せる作品。 ![]() 雪中美人図(せっちゅうびじんず) 礒田湖龍斎(いそだこりゅうさい生没年不詳)筆 江戸時代・18世紀、絹本着色、1幅 江戸時代・18世紀、絹本着色、1幅柴垣の向こうから不意に現れた白無垢姿の女性に、竹叢から銀雪が降り落ちる一瞬を描いている。純白の綸子(りんず)と薄絹の被衣(かずき)、そして煌く粉雪を、胡粉(ごふん)によって巧みに描き出している。湖龍斎の法橋(ほっきょう)時代の傑作である。 酒井抱一(さかいほういつ)は尾形光琳(おがたこうりん1658〜1716)の画風を慕い、江戸の地に琳派の絵画様式をもたらしました。俳諧を得意とした抱一は、琳派の絵画技法を学びながら、四季のうつろいを微妙に感じさせる繊細な洒脱さによって、江戸の人々に愛されました。 さらに抱一の弟子、鈴木其一(すずききいつ)はよく師匠の画風を学びましたが、抱一の没後にその画風を一変させました。本特別展ではプライスコレクションの其一作品がまとまって展示されるため、その洗練された大胆なデザイン感覚を存分に味わうことが出来ます。 □ 主な作品 ![]() 十二か月花鳥図(じゅうにかげつかちょうず) 酒井抱一(さかいほういつ1761〜1828)筆 江戸時代・19世紀、絹本著色、12幅(写真はうち4幅) (右から1月、5月、10月、12月) 1幅にひと月をあて、その月に相応しい風物を組み合わせた12図ひと組の作品。この画題を得意とした酒井抱一は、姫路城主酒井家の次男として生まれ、俳諧も能くした多彩な画家。その繊細で軽妙な表現によって江戸琳派の画風を確立させた。 ![]() 群鶴図屏風(ぐんかくずびょうぶ) 鈴木其一(すずききいつ1796〜1858)筆 江戸時代・19世紀、紙本著色、6曲1双 真鶴(まなづる)と水流という二つのモチーフの形と色を強調する洗練されたデザインが明快で美しい。今回の特別展では、酒井抱一の門人である鈴木其一の優品がまとまって展示されています。
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