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真夏の特別展 『南の貝のものがたり』 平成18年7月29日(土)〜9月3日(日) 特別展示室 ![]() 昨秋10月の開館以来、九州国立博物館では3回の開館記念特別展を開催してきました。いずれの展覧会も多くの観覧者を迎え、好評を博しております。これも、ひとえに博物館を愛する皆さまの厚い御支援の賜物と、一同深く感謝いたしております。 さて、九州国立博物館では夏季特別展「南の貝のものがたり」を開催いたします。今回は珊瑚礁が広がる美しい南の海に生息する貝と、日本の文化や社会との関わりに焦点をあてます。 亜熱帯に属する南の海域では珊瑚礁が発達し、美しく蒼い海が広がっています。ここでは九州島では見られないさまざまな魚介類が生息し、珊瑚礁とともに独特な世界が育まれています。なかでも南島産の大型巻貝については弥生時代から近世に至るまで、その美しさや希少価値等から人々に好まれ、日本の文化や社会と密接な関わりをもってきました。 弥生・古墳時代の司祭者や権力者が好んだ南島産貝製の腕輪やその形を真似た儀礼用の腕飾(わんしょく)類、また南島独特の美しい貝製品や、古代から近世にかけて人々を魅了した妖しくも美しい輝きを放つ螺鈿製品など。これら貝にまつわる展示品を通して、これまで一般にはあまり知られていなかった南島産の貝が織りなす歴史を紹介したいと思います。 総点数2,800点(うち国宝1件、重要文化財7件)に及ぶ考古資料や美術工芸品を通して、魅力あふれる南の貝のものがたりをお楽しみいただければ幸いです。 ................................................................................................ 工芸作家・池村茂氏特別インタビュー [読む] 工芸作家・池村茂氏インタビュームービー『ヤコウガイの魅力』 ................................................................................................
序章「美しき南の貝」 九州の南に浮かぶ島々。珊瑚礁が発達した海底深くに、イモガイやゴホウラ、シャコガイなど大型の貝が生息しています。この貝を材料にした精巧で美しい貝符や腕輪が造られるなど、多彩な貝の文化が育まれました。その貝製品の数々を紹介します。 第1章「王者のよそおい」 弥生時代、北部九州の司祭者や権力者は南島産の貝に聖なる力が宿っていると考えました。そのため南島産巻貝の腕輪を祭器として重要視しました。ここでは南の貝が人々に与えた影響を当時の権力者の墓から出土した副葬品とともに考えます。 第2章「貝が彩る古墳世界」 弥生時代から古墳時代にかけて、王たちが好んできたは貝製の腕輪は、これを模した石製の腕輪に変わっていきました。古墳の壁画にも貝をモチーフとしたものが描かれ、南の貝が様々な場面で継承されていく世界を見ることができます。 第3章「深海のきらめき」 古代以降、南島に生息するヤコウガイの輝きがより一層人々を魅了していきます。都の貴族はヤコウガイのとれる南の島々を「宝島」と称したほどでした。ここではヤコウガイを素材とした螺鈿製品を中心に、南の貝の魅力あふれる工芸品を紹介します。
序章「美しき南の貝」 ・【重文】鹿児島県種子島・広田遺跡出土貝製品(鹿児島県歴史資料センター黎明館) (ゴホウラ製貝輪29箇、オオツタノハ製貝輪52箇、有孔(ゆうこう)円盤状(えんばんじょう)貝製品4箇、貝符151箇、2孔板状貝製品46箇、貝輪5箇、竜佩状(りゅうはいじょう)貝製品66箇、貝珠1609箇、ヤコウガイ製容器 1箇、オニニシ製貝輪1箇) 第1章「王者のよそおい」 ・佐賀県大友遺跡出土 イモガイ製縦型貝輪(佐賀県立博物館) ・シャーマン衣装(個人蔵) ・【重文】有鉤銅釧(ゆうこうどうくしろ)奈良県奈良市富雄(とみお)丸山(まるやま)古墳出土(京都国立博物館) 第2章「貝が彩る古墳世界」 ・【重文】巴形(ともえがた)銅器 佐賀県唐津市桜馬場遺跡出土(佐賀県立博物館) ・ゴホウラ・イモガイ・オオツタノハ製貝輪 鹿児島県枕崎市松之尾遺跡出土(枕崎市教育委員会) ・【重文】鍬形石(くわがたいし)愛知県犬山市東之宮古墳出土(京都国立博物館) 第3章「深海のきらめき」 ・貝匙(かいさじ)鹿児島県奄美市小湊フワガネク遺跡出土(奄美市立奄美博物館) ・【国宝】飾剣(かざりたち)鳳凰文(ほうおうもん)梨地螺鈿(なしじらでん)(東京国立博物館) ・【重文】鞍(くら)獅子文(ししもん)螺鈿(らでん)(東京国立博物館) ・経箱(きょうばこ)花唐草文(はなからくさもん)螺鈿(らでん)(文化庁) *期間中展示替えを行います。 【重文】広田遺跡出土貝製品 鹿児島県南種子島町広田遺跡出土 弥生時代〜古墳時代 鹿児島県歴史資料センター黎明館所蔵 鹿児島県種子島東岸の砂丘上にある、弥生時代から古墳時代にかけて営まれた墓地から150体以上の古代人骨に伴って多量の貝製品がみとめられた。南島産の貝を加工したそれらは精巧で美しく、南島貝文化の白眉(はくび)である。 オニニシ製腕輪 ![]() テングニシ科の大型巻貝であるオニニシから作られた。本例は女性人骨の左手首にはめられていたが、ほかに男性が着装する例もある。広田遺跡のなかでも少量しか出土しておらず、大変貴重である。 貝符 ![]() おふだ状の貝製品を貝符と呼ぶ。埋葬人骨に伴って出土し、孔(あな)があるものはつなげて装飾品にしていた。組紐状のレリーフは左右対称、上下非対称を基本とするが、この文様が何を表すのかは明らかでない。いっぽう、貝符の形状については南島の中で培われてきた意匠とみる見解がある。 イモガイ製縦型貝輪 佐賀県唐津市大友遺跡出土 弥生時代中期前半 佐賀県立博物館所蔵 ![]() イモガイを縦方向にとった貝輪で、本例のように全体に丸みを帯びたものと、逆三角形に近いやや角ばったものと2種類存在する。貝輪はしばしば甕棺墓から、司祭者や権力者と思われる人骨に装着された状態で出土し、南島産の貝が重要視されていたことがわかる。 シャーマン衣装 近代 個人蔵 ![]() 中国東北部から極東ロシアにかけて居住している少数民族のシャーマンが使用した衣装。別作りの襟飾りおよび袖と胸下には、遠く南方からもたらされた貴重性と呪術性を併せ持つ子安貝(こやすがい)(宝貝)が200個ほど縫いつけられている。さらにこの衣装には、古来より世界各地で呪術的な意味合いを持つ大小20面もの金属鏡や30以上の鈴などが多数ぶら下げられており、シャーマンが跳舞するとこれらが揺れぶつかり合って出す強烈な音や光によってもその呪術性は強く印象づけられたであろう。 【重文】有鉤銅釧(ゆうこうどうくしろ)奈良県奈良市富雄丸山(とみおまるやま)古墳出土 古墳時代前期 京都国立博物館所蔵 ![]() 金銅製の有鉤銅釧。ゴホウラ製貝輪を写した当初の形からは大きく変化を遂げた最終的な形態である。鉤(かぎ)状突起は2本になり、しかも先端が外側に強く折り返されS字状に作られている。また平面形は左右対称の楕円形となり、上下端は平行にやや突起する。内面には段差やバリが見られ、2面の鋳型を合わせて作られた鋳造(ちゅうぞう)製品であることがわかる。 【重文】巴形銅器(ともえがたどうき)佐賀県唐津市桜馬場遺跡出土 弥生時代後期 佐賀県立博物館所蔵 ![]() 弥生時代後期の甕棺墓からの出土品である。本品は巴形銅器の最初期のものでもっとも精美なものである。盾や矢入れに装着した飾金具(かざりかなぐ)で、僻邪など呪術的な意味合いが考えられている。起源については諸説あり、形状からスイジガイを模したする他、ゴホウラの断面を組み合わせたとする論もあるが、いずれも南島産の貝がモチーフとされる。 ゴホウラ・イモガイ・オオツタノハ製貝輪 鹿児島県枕崎市松之尾(まつのお)遺跡出土 古墳時代初頭 枕崎市教育委員会所蔵 ![]() 九州最南端に近い鹿児島県枕崎市松之尾遺跡では、古墳時代でも南島産の貝を加工した腕輪が出土している。ゴホウラ製(中央)、オオツタノハ製(左)、イモガイ製(右)のもので、それぞれ古墳時代の腕輪形石製品の、鍬形石・車輪石・石釧の祖形となった。南島との交易に関与した人物に副葬された可能性もある。 【重文】鍬形石(くわがたいし)愛知県犬山市東之宮古墳出土 古墳時代前期 京都国立博物館所蔵 ![]() 木曽川に臨む丘陵尾根に築かれた全長72mの前方後方墳からの出土。後方部に築かれた竪穴式石槨(たてあなしきせっかく)から三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)のほか多彩な石製品が検出された。この鍬形石はゴホウラ製貝輪を石で真似たもの。本例はその中でも古く、製作技法もシャープで遺存もきわめて良好。石材は群雲(むらくも)状の斑(まだら)模様が入る独特の材質で、数ある類品のなかでも群を抜く美しさである。 貝匙(かいさじ)鹿児島県奄美市小湊フワガネク遺跡出土 飛鳥〜奈良時代 奄美市立奄美博物館所蔵 ![]() ヤコウガイからつくられた匙。小湊フワガネク遺跡からは多量のヤコウガイの貝殻や貝匙の未製品等が出土しており、貝匙の生産地であったことが分かる。7世紀以降本州に輸出された可能性が高く、奄美群島の歴史的重要性を伺わせる。 【国宝】飾剣(かざりたち)鳳凰文(ほうおうもん)梨地螺鈿(なしじらでん) (展示期間:7月29日〜8月13日) 平安時代 東京国立博物館所蔵 ![]() 鞘(さや)に付く山形金具でベルトから吊って帯びる形制は、もとは中国の唐時代の様式であり、飛鳥・奈良時代の日本の宮廷にも継承され、江戸時代までも永く伝えた。貴族が儀式で帯びる儀礼用の太刀のうち、最も格が高いのが飾剣。飾剣と書いて、カザタチと読む故実もある。奈良時代の衣服令では、この類の儀礼太刀は金具の色目でもって官位を識別したが、やがて平安時代になると、鞘に施す技法でもって識別することとなった。かかる事情のなか、鞘を螺鈿で飾るものも製作された。螺鈿にしろ、金具にしろ、鞘の装飾は表側を重視し、裏側の装飾はややおとなしい。見えないから力を注がないのでなく、帯びたときに擦(す)れることを懸念した配慮だとみる。 【重文】鞍(くら)獅子文(ししもん)螺鈿(らでん) 鎌倉時代 東京国立博物館所蔵 ![]() 馬の背にのせる道具。表面を金地に蒔絵とし、獅子の文様を螺鈿とする。金地蒔絵に螺鈿を施すのは鎌倉時代の特徴。中世の鞍の外観をするが、乗馬のときに手をかける手形が無いなど、古代の鞍の要素も残す。獅子の表情は、彫刻刀の線で、それぞれに変化をつける。この刻線を毛彫りといい、螺鈿の表情を豊かにする技法である。 経箱(きょうばこ)花唐草文(はなからくさもん)螺鈿(らでん) (展示期間:7月29日〜8月23日) 朝鮮・高麗時代 文化庁 ![]() 中国で夜光(やこう)貝(がい)を用いる螺鈿がはじまるのは唐からで、それには大帝国による南海方面への影響拡大という事情があった。この技法が日本と新羅にも伝わる。朝鮮半島漆芸(しつげい)技法では、特に螺鈿の洗練に尽力したように、かつて高麗時代の螺鈿といえば中国でも賞賛された。かかる時代背景のなかか、螺鈿の経箱の優品が多く作られた。 |
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